母に捧げるラブレター ~母命日の日に贈ります~
拝啓、母上様
母上・・懐かしい響きです。いつも実家に行けば私は貴女の事を玄関から「ははうえ~!」と呼んでいましたね。今日はあの頃に戻って貴女の笑顔を思い浮かべ天国へと手紙を書いてみたいと思います。
貴女と会えなくなってもう4年もの年月が経とうとしています。なんだかあっという間でしたよ。この4年間で環境もずいぶんと変わりました。私の鑑定室は竹町から府内へと移転され大きく増床しました。出来ればこの今の鑑定室を見せてあげたかったよ。だって、開業当時はずいぶん心配してたもんね、ちゃんとやっていけるの?って・・。
佑季は中学生になりました。あの幼かった佑季がですよ、今ではしっかりと自分の意思を持ちバスケ部に入部し汗を流しています。友達が出来ないと不安になっている日々もあったけど、今ではそれが嘘のように仲間を作って楽しんでいます。
私はと言うと・・。相変わらずですね。きっと母上が生きていれば「仕事ばっかりしてないで早く家に帰りなさい!ちゃんとゴハン食べてるの?ちゃんと休みなさいよ!?」と怒られちゃうでしょうね・・。だいたい、分かりますよ・・。
まだ少し夜は肌寒い日もあります。こんな気候の夕陽を眺めていると、母上の事を思い出し目頭が熱くなります。あれは小学校4年生の時、あの日もちょっと寒い夕方でした。私がサッカーの合宿に行くのを嫌がった時、貴女は大分川の土手まで一緒に散歩してくれましたね。そこで「ほい!」ってくれた一本の缶コーヒー。大きな夕陽と共に飲む缶コーヒーは温かく美味しかったのを今でもはっきり覚えています。「これも成長なんよ!」・・貴女はそう言ってくれました。
いつもただただ厳しかった母が、私のワガママに温かく接してくれた日でした。それまでの私は母の傍を離れない甘えん坊でした。でも2泊3日の合宿に行って初めて親元を離れ、少しだけオトナになった気分でした。練習はきつかったけど、帰って来た時の達成感を今でも鮮明に覚えています。
小学生の頃の母上との思い出はまだあるよ。母上に連れられ街に買い物に行くんですが、これが苦痛でね!(笑)歩くのも大変だし洋服を見ている間は暇だし、、試着室があればそこに座って貴女が選んでいる姿を眺めていました。でも何故これを今でも覚えているかというと、そんな暇で耐えられない時に買ってくれる瓶のコーラが美味しかったんですよ!そして御褒美に一つだけ買ってもらえるミニカー。これが楽しみだったから、ついて行ってたんです。
オトナになって瓶のコーラを見るとあの時の光景を思い出します。そして今でもたまにミニカーを買うけど、やっぱり買うのは一つだけ。・・なんだか2つ3つ買ったら貴女から怒られそうな気がしてね・・。
だんだんと私もオトナになり、いつの日からか貴女の姿が小さく丸く見えるようになりました。言葉遣いも私が上から目線になってしまいましたね。それでも相変わらずの面白い母上でした。でもある時からか貴女は時折、私に訴えかけるようになりました。「足が痛いんよ~」って。あの時、私は「太ったけんやろ!」等と対応していましたが、あの時早く病院の検査を受けていれば白血病も早期発見出来ていたのかも知れません・・。
母上が入院し、そして医師から余命宣告をされた時、私は冷静でした。ぃゃ、実感がなかったんだよね。だってあの母上が死ぬ訳がないと思ってたから。仕事の多忙を理由に御見舞いは最低限しか行かなかったね。でも、その数少ない御見舞いの中で一日だけ、二人でゆっくり話をしたね。内容は大した事はなかったけど、貴女の愚痴や不満をいっぱい聞きました。そして一緒に写真を撮りましたね。薬の副作用で髪の毛はなかったけど、それでも最高の笑顔で私はあの写真が大好きです。
母上、こうやって手紙を書くと、どうしてもあの話題に触れなきゃいけないんだと思うんだよね。ある日の病室で貴女は私に「モスバーガーが食べたい」と言いました。私は今から買いに行くのが面倒で「また今度買ってくるよ!」と言いました。結局、次の日から食事制限がかかり、母上は二度と大好きなモスバーガーを食べる事が出来ませんでした。
貴女は「もう良いよ♪」と言ってくれたけど、他界してから尚更、それだけが悔やまれてなりません。きっと貴女はあの日がモスバーガーを食べられる最後のチャンスだと悟っていたんでしょう。そんな事を何も知らない私は面倒くさいという気持ちから動かなかったんです。今でもモスバーガーを見ると貴女の事を思い出してしまい食べられません・・。
お見舞いに行った帰りは、いつもエレベーターまで見送ってくれました。あの扉が閉まる瞬間に見せる貴女の寂しそうな目を私は今でも、、この先も絶対に忘れません。いつまでも私の前では強い、たくましい母上だったもんね。
他界してから何度も母上は私の前に現れてくれました。今までは霊感がある事を良い事と思った事はなかったけど、貴女に他界してからも会えたから霊感ともちゃんと向き合えるようになりました。苦しみから解放され大好きな祖父とも天国で会えたからかな、いつも笑顔を見せてくれるよね。私が思い悩み前に進めず悔しい思いをしていた時、貴女は私の後ろで咳をしますよね?毎回ビックリするけど、天国から「そんな事くらいで悩んだりしなさんな!」と激励されているようで勇気が湧いて、あれ以来いろいろと悩まなくなりました。ありがとう、母上。
今、会いたいか会いたくないかと問われると、そりゃぁ会いたいに決まっています。でもね、会えなくても自分の足で立って前を向けるようにはなったと思います。あの日、土手で飲んだ缶コーヒーの味を初心の味として、これからも自分なりに一歩ずつ前に進んでいくから安心してね!
そして、いつか会いましょうよ!まだまだ先の話になるとは思うけど、私だってやがてはそちらに行くんだから。だからその時まで元気で居てね!私もいーっぱいお土産話を作っておくから。貴女に再び会う時、堂々と胸を張って「久し振り!母上!」と言えるような、そんな人生をこれからも築いていきます。だから、遠くから見守っててね、母上♪♪
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